「ハンガリーの窮状と危機にかんする声明」への賛同の呼びかけ

日本ではメディアの話題となっていないが、東欧ハンガリーの政情が急転している。1989〜90年の「体制転換」以後、なおも好転しない経済・財政事情のもとで次第に蔓延する政治的アパシーを背景にして、昨2010年4月、「ハンガリー国民主義」を旗印とするフィデス(青年民主同盟Fidesz)のオルバーン内閣が議席の2/3以上という圧倒的多数で組織され、EU主要諸国ならびに周辺諸国とも微妙な拮抗関係に入りつつある。
世界市場の動向と国民国家の利害が矛盾をきたすときはかられる民族・国民意識の高揚は、この世紀においてもむしろ稀ではない。「ハンガリー人自らが招いたのではない金融危機にたいして、我々は充分に犠牲を払ってきた」との認定から、「労働・家庭・家族・健康そして秩序」をスローガンとする「新しい国民的共働国家」を建設すべし、とするフィデス・党首オルバーンの政策は、たしかに「ポピュリズム」的ではあっても、それだけでは直ちに「全体主義」的であったわけではない。しかし、困窮する若年層を基盤とするより「急進的」なヨッビク(‘より良いハンガリーのための運動’Jobbik)との連携のもと、情報統制と人員整理を眼目とする「メディア法」が今年年頭から施行されたのを契機に、疑心暗鬼と「権威主義」的同調への風潮が亢進していった。以前から同立法を批判していたA.ヘラー、M.ヴァイダ、S.ラドノーティ等「ブダペスト学派」の哲学者たちを「リベラル=ユダヤ系」として狙い撃ちにしたうえで、「研究資金不正使用」との疑惑にさらして告発し、さらにルカーチ・アルヒーフ所員達の罷免人事、アルヒーフそのものの統廃合を行政的にすすめようとするといった事態の展開に至っては、余りにも明白に常套的なフレーム・アップの手口と断ぜざるを得ない。
既にJ.ハーバーマスはいちはやく今年1月には、南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)にEU委員会の無策を難じる声明文を公表している。
またドイツ・ヴッパータール大学テンゲイ教授の声明文が、日本哲学会ならびに日本現象学会のホーム・ページにも掲載されており、既に3000余名の賛同署名が世界から寄せられている、とのことである。
更にまた、3月1日にはEU議会において、ヘラーがこうした一連の経緯について発言する予定となっている。


以上のような状況認識のうえで、次のような声明文をまずインターネット上で公開したく考えています。声明に賛同いただける方々の署名を募ります。然るべき段階を経て、ハンガリーをはじめ関係各位宛にそれぞれハンガリー語版、ドイツ語版、英語版などを送付する方針です。なおまた、上記情報、下記声明文それぞれにも改善の余地はあろうか、と思われます。御意見、アドヴァイス等は高幤宛にお寄せください(takahei{at}let.hokudai.ac.jp)。

北海道大学教授    高幤 秀知
金沢大学名誉教授   丸山 珪一
一橋大学准教授    大河内 泰樹

※メールをお送りいただく場合は{at}を@におきかえてください。


声明に賛同いただける方は以下にて署名をお願いします。

https://ssl.form-mailer.jp/fms/f4072aad141717